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組織開発と採用支援をしている「株式会社ほのおのうず」代表の山下です。中小企業の経営者や管理職の方と一緒に、組織づくりと新卒採用の強化に取り組んでいます。
10月。採用担当者の方は、27卒の内定者フォローに28卒の母集団形成、29卒の採用をどうするかも考え始める多忙な時期。限られた人数で複数の学年を同時に動かしていると、求人票やスカウト文、学生への連絡をAIに任せたくなるのは自然なことです。
実際に、求人票やスカウト文の作成、応募者への連絡、一次面接まで、AIに任せられる範囲は広がっています。私たちも、採用の戦略設計やデータの収集・分析にはAIを使っています。
一方で、AIやシステムに任せがちな日程調整のメール一通でも、学生の志望度は変わります。これは採用の支援で、私が大切にしている考え方です。
この時代、採用活動にAIを利用しない手はありません。しかし、AI活用と、採用担当者の実務力という二つを高め続けることが、これからの採用戦線で重要になります。
学生の就職活動は、すでにAIが前提になっている
マイナビキャリアリサーチLabの「2026年度(2027年卒版)新卒採用・就職戦線総括」(2026年10月公表)によると、就職活動でAIを使ったことがある学生は84.9%で、前年から18.3ポイント増えました。使い方は、ESの推敲が71.8%、面接対策が56.2%、ESの作成が55.0%です。
同じ調査で、学生が就職活動でAIを使っている実感がある企業は61.4%。こちらも前年から30.8ポイント増えています。
これによる変化は二つ。一つは、ESが読みやすくなり、文章の出来で候補者を比べにくくなったことです。面接官は、書かれた文章の外側にある「この人は何を考えているのか」を、面接の場で確かめなければなりません。
もう一つは、自社の求人票やスカウト文も、他社と同じようにAIで一定の水準まで書けるようになったことです。文章の出来だけでは、学生から見た企業の違いが伝わりにくくなっています。
AIに面接を任せても、何を見極めるかは会社が決める
面接そのものをAIが担うサービスも登場しました。2026年10月に株式会社PeopleXが発表した導入事例では、求める人物像に合わせて評価項目とその比重を設計できると説明されています。質問も評価基準も、募集職種ごとに企業が設定する仕組みです。
AIに面接を任せた場合でも、自社がどんな人を良しとするのかを言葉にする仕事は会社に残ります。ここが曖昧なまま導入すれば、曖昧な基準のまま、選考だけが速く進みます。
たとえば評価項目を「主体性がある人」とだけ決めておくと、声が大きく話がうまい人を、主体的だと見てしまうことも考えられます。「指示を待たずに、率先して動いた経験があるか」「そのとき、何を大切に動いたのか」まで自社の求める基準として言葉にすると判断の質が高まります。
私は、AIをどれだけ使っても、最初の構想は人がつくらなければ中身に責任を持てないと考えています。AIのアウトプットを世に出してよいかを決めるのも、人の仕事です。私たちも、AIの出力をそのままお客様に納品することはしていません。

日程調整や些細な連絡こそ、採用のコア業務
面接日程の調整、日々の連絡、スカウト文の作成。こうした仕事は「ノンコア業務」と呼ばれ、外部への委託やAIでの自動化の対象になりやすい仕事です。
私は、これらこそ採用のコア業務だと考えています。日程調整のメールも、説明会も、面接も、求職者と会社が言葉を交わす場です。その一つひとつで、志望度は上がりもすれば、下がりもします。
たとえば、候補日だけを並べた定型文のメールに「先日の説明会でいただいた質問、面接でもぜひ詳しく聞かせてください」と一言を添える。日程を伝えるという用件は同じでも、学生に届く印象は大きく変わります。
学生がまだ言葉にできていない迷いや本当に知りたい情報の有無に気づくことは、目の前にいる採用担当者にしかできません。これこそが採用担当者の実務力の核です。
採用のAI活用と、担当者のスキルアップを同時に進める
AIを使えば作業は速くなりますが、学生と直接話す場面で志望度を上げられなければ、内定承諾には結びつきません。一方で、担当者の経験と勘だけに頼る採用は、その人が異動や退職でいなくなったとたんに止まってしまいます。
私たちが採用の支援で、AIの活用と担当者のスキルアップを同時に進めているのは、このためです。AIで戦略設計とデータの収集・分析を行い、採用担当者その人のスキルを、研修・面接への同席・ロープレ・フィードバックで上げていきます。目指しているのは、AIが使えなくなっても、担当者が急に代わっても、採用を成功させられる組織体制の構築です。
採用担当者の実務力は、選考の場面ごとに鍛えられる
支援の1年目に私たちが重点を置くのは、学生との接し方、説明会、面接、合否判定といった実務力の向上です。どれも、場面ごとに具体的な打ち手があります。ここからは、外部の支援がなくても実行できるノウハウを3つ紹介します。
1. 見極める基準は、活躍している社員の言葉からつくる
評価項目を決めるときは、経営者や活躍している社員に、仕事で迷ったときは「何を基準に判断・行動したのか」を聞いてみてください。具体的な場面とともに語られた言葉は、そのまま面接の質問や評価の基準に使えます。
理念がある会社なら、理念に込めた意味を確かめ、それを大切にすることが働く人にとってどんな意味を持つのかを、事業と結びつけて言葉にします。見極める基準と、学生に伝える自社の打ち出し方が、同じ言葉から生まれます。
2. 説明会は、自社の違いが伝わる構成にする
求人媒体を読んでも、仕事内容や待遇の説明が中心で、他社と何が違うのか、何を大事にしている会社なのかが分からないケースは少なくありません。説明会でも同じことが起こります。
学生が知りたいのは、この会社で働くとどんな毎日を過ごすことになるのか、という点です。会社の側から「うちではこういう時間の過ごし方だよ」と示せると、学生は自分に合うかどうかを判断しやすくなります。このときにネガティブな情報も一緒に伝えることで学生もより判断がしやすくなります。
少し話はそれますが、株式会社ジーピーオンラインが2026年10月に発表した「共感型採用に関する採用サイト意識調査2026」では、知りたいネガティブ情報の上位は、44.0%の「仕事の大変なところ」、41.0%の「入社後に感じやすいギャップ」、40.3%の「向いていない人の特徴」でした。転職活動中の300名を対象にした調査ですが、入社前に仕事の大変さやギャップを知っておきたいという気持ちはきっと学生も同じではないでしょうか。
こういったネガティブ情報を伝える際は「この状況を会社としてどう対処していくのか」といった内容も補足として伝えられると、ポジティブな印象で着地させることができます。
説明会の出来は、説明会から選考に進んだ学生の割合で振り返ります。学生の志望度の変化が表れやすい数字です。あわせて、説明会のあとに学生の興味の度合いとその理由を聞いておくと、次の面接で何を重点的に話すかを考える材料になります。
3. AIで作った文章は、担当者が理由を説明できるかで確かめる
AIで作った求人票やスカウト文は、担当者が「なぜこの表現にしたのか」を1行で説明できるかを確かめます。説明できない文章は、まだ自社の言葉になっていません。説明できる担当者は、面接で学生に同じことを聞かれても、自分の言葉で答えられます。
まとめ
採用活動は、最後はコミュニケーションの質で決まる。
私はそう考えています。学生が「この人と働きたい」と思える瞬間は、説明会や面接はもちろん、日々の些細な連絡のなかで生まれます。
採用は、人の人生に触れる仕事です。AIに任せる部分と、人が担う部分を、自社の言葉で分けておくところから始めてみてください。
少しでもこの記事がみなさんの採用力の向上のきっかけになれば幸いです。
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